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  • 2020 Apr 30
  • 春の宵

    里山を二時間走ったあと、夕焼けが綺麗だったのでテラスで酒を飲む。目の前に立つ樹の根元には、三日前に埋めたジャンガリアンが眠っている。ホームセンターでディスカウント価格の500円で売られていたのを息子が買った子だ。よくある話だが、面倒は結局僕がみることに。去年の暮れに腫瘍ができて、日を追うごとに大きくなり、末期には体の三分の一位に膨らんだ。取材に出てても気になって、頻繁に安否を確認していた。毎回取材から戻っては、元気な姿を見てようやく一安心していた。覚悟はしていたけど、三日前の夜、僕の手のなかで息を引き取った。たかが一匹の小さなネズミだけど、確かに僕という存在の一部になっていた。ジョン・コーフィがいてくれたなら、なんて思ったり。答えの出ない命の重みに想いを巡らせる。テラスにいる僕に、大学生になった息子がシガーを持ってきた。久しぶりに燻らすシガーは予想に反してなかなかの旨さ。儚くも心地よい、穏やかな春の宵を過ごす。

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